2016年10月16日日曜日

猫にはいつか恩返しをしたいと思っている

あれは俺が中学1年か2年だった時、と記憶している。
Jリーグの開幕と同じはずなので、たぶん1993年のこと。

まだ生まれたばかりに見える仔猫が実家の庭に置かれたダンボール箱に入っていた。誰かがうちにピンポイントで捨てていったのだろうか。確か白に近い灰色をした小さな猫。それを見捨てるわけにもいかず、誰か飼ってくれる人が見つかるまでの間、俺が世話をすることになった。ミルクをあげたり、部屋の中で抱っこしながら一緒に寝たり。中学校では先生や友達に飼えないかと聞いてみたり。あの猫、可愛かったし温かかったたな。

本当はうちにずっといて欲しかったけど、いつか誰かのところに行くからとまだちゃんと名前もつけないまま一緒に過ごしてから数日経ったある夜、勉強が終わった俺を駅前の塾まで迎えに来てくれた父の表情が暗かった。

「あの猫、車にひかれたぞ」と伝えられた俺には返す言葉がなかった。

数日の間に赤ちゃんだった猫も少し成長して、遊ぼうとして家の前の道路に飛び出し、車にひかれたようだ。塾から帰る車の中で、外を見ながら少し泣いた。それから家で動物と過ごすことはなかった。

長女が犬を飼いたい、猫を飼いたいと言う度に、あの仔猫のことを思い出す。小さくて温かかったあの仔猫。名前をつける前にいなくなってしまったあの仔猫。

猫にはいつか恩返しをしたいと思っている